吉田たちの挽歌

トリプルファイヤーの企画「吉田たちの挽歌」にご来場いただいた皆様、誠にありがとうございます。吉田ヨウヘイgroupは最高でしたね。ナイスアンサンブルにコチコチになっていた体がほぐれてとても心地が良かった。
楽しみにしていた「パチンコがやめられない」のカバーも素晴らしかったです。リズムにコシがあって、さすがだ!と感服しました。ギターの西田くんには完コピしていただいてこれは本当にギタリスト冥利につきるなと思います。またご一緒できたら素敵じゃないか。
さて、公私混同でお馴染み「趣味の選曲」コーナーでございます。毎度毎度誠に恐縮ですが。
当日幕間に流した音源は以下のものでございます。

  1. Snowfall / Claude Thornhill & His Orchestra
  2. I Talk To The Wind / King Crimson
  3. Town Feeling / Kevin Ayers
  4. I Want To See The Bright Lights Tonight / Richard & Linda Thompson
  5. Oily Way / Gong
  6. Minipax I / Hugh Hopper
  7. She’s Leaving Home / Harry Nilsson
  8. I Problemi Di Ferdinando 1 / Picchio Dal Pozzo
  9. Thank You For The Smile / The Keith Tippett Group
  10. The Secret / Slapp Happy
  11. Pretty Little Girl (Part One) / The Coxhill Bedford Duo
  12. Pretty Little Girl (Part Two) / The Coxhill Bedford Duo
  13. Yes I’m Your Angel / Yoko Ono
  14. Dedicated To You, But You Weren’t Listening / The Keith Tippett Group
  15. Let Me Come Closer To You / Colin Blunstone
  16. La Vieio Mostro: Part II / ZNR
  17. Monkey With the Golden Eyes / The Muffins
  18. Golf Girl / Caravan
  19. Rambler / Bill Frisell
  20. Dear Betty Baby / Mayo Thompson
  21. The Unfaithful Servant / The Band

いつも題目を決めて選曲をしているのですが、今回はあまりにも安直すぎて恥ずかしいので、勿体ぶって題目を明かさないでおこうかと思います。聴けばすぐにばれてしまうことですが。
世の中にもし「半袖の音楽」と「長袖の音楽」というものがあるとすれば、今回選んだ音楽は長袖のほうです。時節柄、こういう具合のプレイリストにしてみました。季節の贈り物です。
今回のために用意した音源をMixcloudというサイトにアップロードしてみました。師走の忙しさに目眩を起こしかけたときの慰みにどうぞ。

A Better Tomorrow Mix by Notoriious on Mixcloud

 

ボクは許すけどね

先日、駅前のATMが置いてある銀行の出張所に入ろうとしたところ、向かいから大学生と思しき男がやってきた。手を袖で覆って口元に当てるのが癖で、前髪が邪魔な場合は女性用のヘアクリップで止めそうなタイプの青年で、こちらに気づいた途端、歩みを速めてそそくさと出張所に入っていった。わたしは、え、そういうことするの、と一瞬狼狽えた。急いでいたのか待たされるのが嫌だったのか知らないけれど、こういう場合、お互いに一度どうぞどうぞと譲り合うのが物事を気持ち良くやり過ごすための作法ではないのか。そしてそれがマナーというものではないのか。一体君は何を考えとるんだ、という調子で腹を立てつつも、こんな些細なことにいちいち腹を立てるのも馬鹿らしいとも思うし、だけどなんだかなあ、みぞおちあたり気持ち悪いんだよな、まあいいけど、ああでもこれって怒りの感情だよなぁ、というのを繰り返して今日に至る。

何事に対しても大らかでいたいし寛容でありたいと願っている。しかし、人としての器が茶碗をひっくり返したときの底の部分程度しかないので、自分が不当な扱いを受けるとやはり腹が立つ。腹が立つけれども、何事にも寛容でいたいし、いつも微笑みを浮かべていたい。これを同時に叶えるのは、もはや許すという行為しか残されていないだろう。

許すという行為によって、怒りという負の感情をポジティブな気持ちに昇華することもできるし、自分が相手よりも優位に立ったような心持ちになれる。だがしかし、今ここであの青年を許したところで、彼が私によって許されたのだという事実をを知る由もないのだから無駄である。どちらが優位に立っているのかお互いがきちんと把握する必要がある。だからあのとき、抜け抜けとATMの操作をしている青年の耳元で「ボクはキミのこと許すけどね」と囁くべきであった。

しかし実際にこれをやったら本当に気持ちが悪いと思う。三日間ぐらいはトラウマが残りそうだ。逆の立場だったらと思うと寒気がする。こんなことを考えている自分に対して心から情けなく思う。まったくもって人の世はままならない。気持ちの良い人にわたしはなりたい。

https://www.youtube.com/watch?v=EibNT31TyZo

 

【のとりいあす告知】2014年残りのライブ、トクマルシューゴPlus、選曲家

先日、新宿のサザンテラスに植えられた樹木に電飾が取り付けられているところを見た。秋を堪能せずにもう年の瀬気分か、季節の前借りか、自転車操業か、季節の移り変わりに目を向けてみる余裕もないってか、ええ!と啖呵を切る前に、念のためインターネットで調べてみると、点灯されるのは11月半ばのようで、そんな前から準備しなきゃいけないのか、それは大変、誠にご苦労様です、という気持ちになった。とはいうものの、もう今年も残り2ヶ月と半分で終わってしまう。

我々トリプルファイヤーのライブも残り5本。この数字が多いのか少ないのかはわからない。それはそれとして、その5本のライブはそれぞれ一体どのような内容なのか。あ、それ気になるかもという方はtriplefire.comのほうからチェックしてみてください。ちなみに11月30日(日)は吉田ヨウヘイgroupをお呼びして自主企画をやります。渋谷O-nestにて。よしなに。

私個人としても年内にふたつのイベントが決まっています。まずはこちら。

Deerhoofのグレッグさんに続いて現れたるのが私です。

トクマルシューゴさんのレコーディングプロジェクトに参加しました。その第一弾シングルが12月3日に発売です。さらに12月16日にDeerhoofのライブにトクマルシューゴPlusの一員として参加します。こちらの方々とご一緒です。(敬称略)

トクマルシューゴ、谷口雄(森は生きている、etc)、田中馨(ex-SAKEROCK、ショピン、 YankaNoi)、三浦千明(YankaNoi、蓮沼執太フィル、etc)、遠藤里美(片想い、Biobiopatata、etc)、小林うてな (ex-鬼の右腕、うてなCAMP、etc)、ユミコ(YankaNoi)、岸田佳也(YankaNoi、etc)、グレッグ・ソーニア (Deerhoof)

会場は新代田FEVER。詳細はshugotokumaru.comからチェックしてみてください。どうぞよしなに。

続いて、久々の選曲です。

2014年12月26日(金) 渋谷o-nest
I feel virgin!
open/start 18:30 ticket¥2000(1D別)
来来来チームにぱいぱいでか美 / taiko super kicks  / Y.I.M
DJ春菊+上野翔(箱庭の室内楽)/トーニャハーディング
選曲家鳥居(トリプルファイヤー)

 

いつもお世話になっているハリエンタル社長とポス子さん企画です。こちらもO-nestです。企画名の”I feel virgin”、円山町というロケーション等々を考慮にいれつつ、ぱいぱいぱいな選曲をするつもりで現在仕込み中です。どうぞよしなにお願いします。

 

遠い所に行きたくない

決まったときはどうにかなってしまうのではないかと思っていたけれど、蓋を開けてみれば楽しい遠征であった。大阪、京都、北海道を三日間で回るというタイトなもので、遠征中に二回ぐらい泣いてしまうだろうと覚悟していたが、泣かずに済んだ。

出発前は細野晴臣の「Choo-Choo ガタゴト」をよく聴いた。林立夫のドラムがすごい。ジガブーばりのバウンス感覚。やはりバウンスには耐え難い魅力があって、この気持ちをどうしたらいいのかもはやわからない。細野晴臣はスウィングとイーブンの混じったエイトビートを「おっちゃんのリズム」と呼んだけど、「ハネ」はやはり大人の味という感じがする。

タフな行程をなるべく軽快に乗り切るコツは全体を意識しないことにあると最近気づいた。行程を行列に見立てたときに、横から見ると「こんなに並んでるのかよ、うわあ」と気が重くなってしまうが、前方から列に相対すれば先頭しか見えない。というか先頭しか見ないように意識する。それで目の前に現れた行程をこなしていく。JBの「ファンクは1拍目にあり」という言葉を曲解して、これを思いついた。

ものごとは、5拍目、9拍目(そんな数え方があるのかは知らないが)に行くからしんどくなるのであって、4拍やったら次は新しい1拍目、というのを繰り返していれば、何も積み重なっていかないので身軽なままでいられるという考え方である。そんなことをいっても実際には疲れるのだが。マラソンでスタートからゴールまで100メートル走ばりの速さで走ればぶっちぎり、みたいなしょうもない話かもしれない。しかし、音楽に限った話でいえば、ループで構成された音楽を、5拍目、9拍目というふうに、時間とともに起承転結のような何かが進行していると思って聴いたり演奏してもおそらくつまらないのではないか。1拍目とはまさに”It’s A New Day”のことなのである。常に新鮮な気持ちで1拍目に乗りかかろう。一体何の話をしているのか。

ここ最近ずっと風邪のひきはじめのような症状が続いていたから、遠征に向けて、葛根湯を飲んで、よく眠り、あまり食べないようにした。風邪の原因となるものは食べ過ぎと睡眠不足だと思う。早めに対処をしたおかげで出発前には風邪の症状を抑えることができた。

今回の遠征では移動中にマスクをつけていた。ウイルス防止のためというよりは、喉と鼻に潤いを与えるためである。空港の荷物検査で怪しまれたが、マスクのせいだったかもしれない。

遠征にはテレキャスターを持っていった。これが重いのでとても難儀であった。遠征用にDEVOが使っている「鉛筆ギター」を導入しようかと考えている。昔買ったGIGSの企画でPOLYSICSのハヤシさんが自作していたので、DEVOの使っているのも手作りのものだと思っていたが、調べてみると既成品であることがわかった。La Bayeというメーカーの「2X4」というギターである。「2X4」とは住宅に使用される木材のことで、規格寸法材料の一種だそうだ。

これで、このギターがめちゃくちゃ重かったらどうしよう。


 

ヒップホップがハネだしたのはいつからなのか問題(DJ Jazzy Jeff & Mickのミックステープ"Summertime5"を聴いて)

ツクツクボウシの鳴き声を聞いて「夏ももう終わりか」などと思わせぶりな顔をして呟く隙もなく、夏は秋によって彼方へと押しやられてしまったが、相変わらずDJ Jazzy Jeff & Mickによるミックステープ“Summertime”を聴いている。
このミックステープに収められた90年代のヒップホップおよびR&Bのヒット曲のリズムが不思議と体によく馴染んで心地良い。
最新版の”Summertime 5″ではニュー・ジャック・スウィング(以下:NJS)と呼ばれるジャンルの曲が多く取り上げられている。具体的には以下のような曲だ。Wreckx-N-Effect “Rump Shaker (Radio Mix)”Guy “Groove Me”Bobby Brown “My Prerogative”SWV “Right Here/Human Nature”Bell Biv Devoe “Do Me!” “Poison”
NJSは80年代後半に大流行したブラックミュージックのいちジャンルで、2014年現在においてはエイティーズという時代に咲いた徒花という扱いを受けている。肩パッドの入ったジャケットや、スラムダンクのゴリのような髪型、スパッツ、派手な打ち込みドラムにシンセといったトゥーマッチなイメージに鑑みても、さもありなんと思う。
そんなNJSにおけるリズムの特徴は、その名が示すように、リズムがスウィングしているところにある。NJSのリズムは16分の3連符(というより6連符×4拍?)によって構成されており、一般的なジャズのスウィングに比べると、その間隔は細かい。NJSの生みの親であるテディ・ライリーはドラムマシンを用いて1小節を24分割するクオンタイズをかけて細かいハネを機械的に編み出したそうだ。最近そんな事を物の本を読んで知った。
“Summertime”をなんとなく聴いているときに、NJSに限らず多くの曲がハネていることに気づいた。これは主にドラムのキックについてのことで、90年代のヒップホップ及びR&Bはハネたキックがベーシックなものであるということを改めて認識した。
NJSは当時台頭しつつあったヒップホップから影響を受けて作られたということなのだが、その頃のヒップホップってハネてなくないか?と疑問に思った。ランDMC、LL・クール・J、ビースティー・ボーイズなどに対してはロック寄りのいわゆる縦ノリのイメージがある。これを思い込みで済ますわけにはいかないので、NJSの当たり年である1988年を基準に、いつからキックがハネるようになったか、itunes内の音源を年代順に並べ替えて検証してみた。(※ハネたリズムに関してはワシントンDCで流行していたGO GOからの影響が強いということを後から知りました)

“I Know You Got Soul” Eric B. & Rakim (1987)

これはハネているといっていいでしょう。イントロから聴こえるドラムの元ネタはFunkadelicの“You’ll Like It Too”(1981)。

もう一つの元ネタは、JBの相棒、“Sex Machine” (1970)で「ゲロンノッ」と合いの手を入れていることでお馴染み、ボビー・バードの同名異曲、というより「本歌取り」の本歌のほうである“I Know You Got Soul”(1971)。ドラマーはジャボ・スタークス。ジャボは基本的にハイハットがそこはかとなくハネていることが多い。ちなみに定番ブレイクの“Funky Drummer” (1970)で叩いているのはクライド・スタブルフィールド。
これらのネタがそれぞれ左右チャンネルで同時に鳴ってて、しかもセンターに808か何かのキックが足されているというとんでもないミックス。
ラキムはジャズのサックスソロを参考にオフビートといわれるフローを開発したらしいのだが、スウィングとの関連性は如何に。

“South Bronx” Boogie Down Productions (1987)


これはイーブンの16といった感じ。フックの”South Bronx South South Bronx”という部分では”Funky Drummer”が下敷きになっている。上ネタは”Get Up, Get Into It, Get Involved”。その他の部分の元ネタはHarlem Underground Bandの“Smokin Cheeba-Cheeba” (1976)だそうです。
KRS-ONEのラップはドラムのキックとスネアに合わせてアクセントが置かれている。いわゆるオンビートと呼ばれるリズムへのアプローチ。

“Ain’t No Half Steppin'” Big Daddy Kane (1988)

https://www.youtube.com/watch?v=2l2O-JOXG_I
これはハネているといっていいでしょう。元ネタはStax/Volt所属で、後にディスコヒットを飛ばすThe Emotionsによる“Blind Alley”(1972)。元ネタのドラムは癖で自然にハネちゃいましたといった趣がある。アル・ジャクソン・Jrの系譜に置くことができそうな味わいで聞かせるビートの世界観。
ちなみにテディ・ライリーも同じネタを使ってWreckx-N-Effectの”Rump Shaker (Radio Mix)” (1992)という曲をプロデュースしている。”Rump Shaker”のビートの手触りにはDAの”Let yourself go, Let myself go” (1999)を思い出さずにはいられない。
先にも述べたが”Rump Shaker (Radio Mix)” は”Summertime 5″で取り上げられている。テディ・ライリーはこの曲の二番でラップを披露しているのだが、このヴァースを書いたのは若き日のファレル・ウィリアムスで、彼はその頃ライリーの下で丁稚をしていたというのは有名な話だ。同じく”Summertime 5″で取り上げられたライリーのプロデュース作であるところのSWV “Right Here/Human Nature”(1992)にはファレルの”S,double,U,V!”という掛け声が収められている。
ちなみに”Summertime 5″ではファレル関連作のSnoop Dogg “Beautiful” (2003)とJay Z “So Ambitious” (2009)が使われている。
“Ain’t No Half Steppin'”では優しいタッチのフレーズのループに、ESGの”UFO”の不穏なSEが重ねられているが、これが遠くから聞こえてくる街路の雑踏だったり、聴衆の歓声を思わせるから不思議なものだ。この曲のプロデューサーはマーリー・マールで、サンプリング主体でのトラック作りを最初に確立したのはこの人とのこと。

“Nobody Beats the Biz” Biz Markie(1988)


この曲も1988年かつマーリー・マール制作。Biz Markieは”Summertime 5″で前口上を担当している。
イントロの切り貼りされたループがこれぞヒップホップだと思わせる。ドラムの元ネタはLafayette Afro Rock Bandの”Hihache” (1974)という曲。この曲でも808か何かのキックとハットの音が足されている。足されたキックによってハネが強調されているような気がする。クオンタイズされていないヨレたビートの感覚がこの時代のヒップホップの味ではないか。
というわけで、マーリー・マールという人物に改めて注目しなくてはいけない。マーリー・マールの最初期の仕事を調べるとMCシャンの”The Bridge”(1987)にぶち当たった。かの有名な「ブリッジバトル」の引き金となった曲である。 MCシャンのCDを持っていなかったため、ひとまずYouTubeで聴いてみた。

MC Shan “The Bridge”(1987)


まさにこれこそが「原典」だ。
元ネタはThe Honey Drippersの“Impeach the President”(1973)という曲で、これが大大大の定番ブレイクで超有名とのことである。ヒップホップの元ネタサイトWhosampledにはなんと539曲も登録されていた。いやはやモグリもいいところで、甚だ汗顔の至りである。
“The Brigde”が発売された1987年は自分が誕生した年なので、なんだか縁のようなものを感じてしまう。だから90年代のヒップホップ及びR&Bのリズムがしっくりくるんだな、とこの際だからこじつけてしまおう。NJSを子守唄に育ちました、ということはないだろうが、なんか昔のSMAPの曲とかNJSっぽいなにかしらの刷り込みはあるはず。
ところで、初めて買ったアルバムは宇多田ヒカルの「First Love」だ。860万分の1枚は今でも我がCD棚にひっそりと置かれている。そんな売れに売れたアルバムの1曲目であり、宇多田ヒカルのデビュー曲でもあり、テレビ番組「笑う犬の生活」のエンディングテーマとしても忘れがたい”Automatic” (1999)のトラックを聴くと、キックがハネており、しかもNJSよろしく1小節を24分割したグリッド上に音符が配置されている。ハットが16分の6連で鳴っていたりして、聴いていてハッとする。
宇多田ヒカルが出てきたときは和製R&B云々という風に喧伝されていたけど、実際はポストNJS歌謡というべきものだったんじゃないか。コード進行あるし、ループ感もないし。
“Automatic”のリズムトラックの元ネタは、2Pacの“Me Against The World”(1995)であると確信を抱いていたのだが、よく聴けば”Me Against The World”のビートは”Impeach the President”の弾き直しである。その普及の仕方に驚かずにはいられない。まさに不朽のブレイクである。
“Me Against The World”の元ネタはIsaac Hayesの“Walk on By”とMinnie Ripertonの“Inside My Love”。”Inside My Love”はATCQの“Lyrics to Go”でお馴染みの定番ネタ。エレピを弾いているのはジョー・サンプル。”Me Against The World”はもっと素直な使い方でメロー度高し。
ちなみに、”Me Against The World”のプロデュースをしているのはSoulshock & Karlinという人たちで、彼らのプロデュース作にMonicaの“Before You Walk Out of My Life”(1995)という曲がある。これがめちゃくちゃ良い曲で、琴線をくすぐられすぎておかしくなってしまいそうなほどである。和製R&Bと呼ばれていたような曲の「分母」という感じがする。歌っているMonicaは当時15歳。ダラス・オースティンがプロデュースしたデビューシングル“Don’t Take It Personal (Just One Of Dem Days)” (1995)が大ヒットしていた。
日本において「First Love」が空前絶後のヒットを記録していた頃、海の向こうアメリカでは、ティンバランド以降の新奇なビートが流行していた。”Summertime”を聴きまくった耳で、ティンバランド製のトラックを聴くと相当不思議(SF)な体験が得ることができるのでお試しあれ。アメリカ人の琴線は一体どうなっているんだと思う。たとえばJAY-Zの“Big Pimpin’ ft. UGK” (2000)など。
ところで、去年出たジャスティン・ティンバーレイクのシングルはウェルメイドなポップスといった風格ですこぶる良かったです。デヴィッド・フィンチャーが監督したPVもさすがはアメリカ芸能界という風格があった。ああいうものころっとやられてしまう体質なのだ。
※90年代ヒップホップに息づくジャズのスイングする感覚を実演でもって説明してくれる親切な動画を見つけたので紹介します。Rob Brown – Evolution of the Hip Hop Groove

 

元ネタとしてのシュギー・オーティス

「トリプルファイヤー 鳥居の人気」と検索をかけてこのブログまでたどり着いた人がいた。そんな検索の仕方があるかよと思うけれど、心配してくれてありがとうございます。

ある人物が洒落たカフェにいたところ、トリプルファイヤーを感じさせるような音楽が流れてきたので、「絶対これパクってんな」と思い、便利なアプリを使って曲名とアーティスト名を調べたそうだ。それは一体何ですかと聞けば、シュギー・オーティスの”Sparkle City”とのことであった。

“Sparkle City”が収録されているInspiration Infomationというアルバムは大の愛聴盤ではあるものの、シュギー・オーティスを元ネタとして指摘される日がくるとは思わなかった。なぜならシュギー・オーティスは洒脱であるから。

垢抜けてはいるが、洗練と呼ぶにはあまりに自然な風体であり、このさりげないクールさ加減は天性のものだと考えられる。

さらにシュギー・オーティスの音楽には浮世離れした響きがあり、これを「彼岸のレイドバック」と呼びたいと思う。

“Inspiration Infomation”は今から40年前の1974年に発表された作品だが、未来からの贈り物のような趣もある。当時、シュギー・オーティスは若干21歳。

このような音楽はもう奇跡としかいいようがないので、指摘に対しては、誠に恐縮ですというしかない。畏れ多い。畏れ多いのだが、実際に参考にしている部分もある。細かいフレーズの掛け合いで全体を作っていくという方法はずいぶん参考にした。したものの、という話である。

ちなみにある人物とはジョニー大蔵大臣です。

Shuggie Ottis – Inspiration Information @ Live at Jimmy Fallon from tomer anonyless on Vimeo.
2013年にアメリカのテレビ番組『Late Night With Jimmy Fallon』にてハウスバンドのThe Rootsと共演したときの映像。
 

真夏のミックステープ”Summertime” / マッスル・ショールズの映画『黄金のメロディ マッスルショールズ』

8月7日は立秋で、暦の上では秋に入ったらしい。しかし、立秋は暑さのピークでもあり、日中は外に立っているだけで滅菌されそうな日差しである。夕暮れ時は風が出てやや涼しい。
帰宅後、冷房の効いた部屋でアイスを食べながら音楽を聴くのがこの季節の贅沢であるが、この夏、もっぱら聴いているのは、DJ Jazzy Jeff & MickによるSummertimeというミックステープだ。
DJ Jazzy Jeffは昔、ザ・フレッシュ・プリンスことウィル・スミスと組んでヒットを飛ばしていた人物。
相棒のMickはセレブのプライベートパーティーなどで回すような一流DJとのことである。
90年代から2000年代前半頃のヒップホップ及びR&Bのヒット曲が選曲の中心となっている。ある曲を元ネタからつないだり、往年のソウル名曲を良い塩梅で配置するなど演出がニクい。
ヒップホップやR&Bはアルバム1枚通して聴くよりも、シングル曲を並べて聴いたほうが、飽きないし、楽しみやすいと思っているので、こういうミックステープが聴けるということは大変喜ばしい。
以下のサイトより、最新版のSummertime Mixtape Vol.5がダウンロードできる。バックナンバーもダウンロード可能。
DJ Jazzy Jeff & MICK present #Summertime5
新宿シネマカリテにて『黄金のメロディ マッスルショールズ』鑑賞。
マッスルショールズはアメリカ南部アラバマ州の田舎町で、その地名はソウルやロックの名産地として知られている。
60年代の頭にリック・ホールという人物がマッスルショールズに「フェイム」というレコーディング・スタジオを建て、地元のミュージシャンを集めてレコード制作を始める。ホールや彼の周囲にいた者が制作したアーサー・アレキサンダーパーシー・スレッジのレコードがヒットし、やがてアトランティックやチェスなどレコード会社専属のウィルソン・ピケット、アレサ・フランクリンエタ・ジェイムズといった黒人シンガーがレコーディングに訪れるようになる。
フェイムお抱えのスタジオミュージシャンであるところのロジャー・ホーキンス、デヴィッド・フッド、バリー・ベケットらはリックの下を離れて「マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ」を設立する。70年代にマッスルショールズ・サウンドの虜となったロックミュージシャン(ローリング・ストーンズ、ポール・サイモン、ボブ・ディラン、トラフィック、ロッド・スチュワート等)が多く録音を残している。
『黄金のメロディ~』は、リック・ホールと、彼の下に集まったソングライターやミュージシャンたちといったいわゆる裏方たちが主役の映画である。
カイゼル髭が目を引くリック・ホールは、クリント・イーストウッドが演じそうなアメリカの頑固な親っさんといった風情。近年のキャンディ・ステイトンのレコーディング場面では、スタジオでミュージシャンたちに遠慮なく指示を飛ばす。曰く「甘やかしたところでそいつのためにならん」。
アレサの旦那とホテルで殴り合った話や、アトランティックのやり手プロデューサーであるジェリー・ウェクスラーとの仲違い、オールマン・ブラザース・バンドをスルーしてしまった話などがリックによって語られる。
リック・ホールを主役として劇映画として仕立ててもおもしろいものができるのではないか。バリー・ベケットらが独立する旨を伝えにリックの部屋を訪ねていく場面や、ハイになって良い気分のミックやキースが来訪する場面は良いシークエンスになりそうだ。ぜひとも『ウォーク・ハード ロックへの階段』のようなコメディにしてほしい。さすがにあそこまでやってしまうのはいささか心配ではあるが。何の心配をしているのだろうか。
映画鑑賞後、改めてマッスルショールズがらみの音源を聴いているのだが、第3期ハウスバンドであるFame Gangの演奏が自分の好みのようである気がする。リズムの質感が軽やかだからか。
映画では主役級であった「スワンパーズ」にしても独立後のステイプル・シンガーズの“I’ll Take You There”といったラテン風味の隙間のある演奏が好きだ。
ただ、タイトルバックで流れる“Land Of 1000 Dances”の巨石が迫ってくるような音を聴くと否応なしに高まる。やっぱりトミー・コグビルのベースが好きなんだな。
などと言いながらメンフィス・ボーイズのコンピを聴くと、良い。マッスルショールズとスタイルは似ているが、アメリカン・サウンド・スタジオの演奏のほうが口当たり(耳当たり)が軽やかではないか。そうなるとフェイムはエビスか。

 

ギターの元ネタと埒外にいることについて

過日、打ち上げの席で、対バンの方から、あなたのギターの元ネタはなんですか?と聞かれて困ってしまった。頭がクラクラしてしまったのだ。
あの曲のあそこの元ネタは何ですか?といった具体的な質問であればまだ答えようもあるけれど、そういう細かいところをまとめてパッと手短に伝えるのは至難の業だ。今までに一度もうまく答えられたことがない。
また、こういった話題は、「文脈」とか「90年代的編集感覚の是非」、「オリジナリティとは何か?」、「スノビズムについて」、「パクリの定義」といった、一家言の飛び交うややこしい話題に飛び火しそうで、いつも及び腰になってしまう。
「どう答えたらいいもんか」と唸っていたら、「ぼくはWeenを感じました」という言葉を頂いた。寡聞にしてそのバンドについては名前すら知らなかった。
家に帰ってからYouTubeで聴いてみたらこれがすこぶる良くて驚いた。よくぞ言い当ててくれました!という思いだ。早速amazonでCDを2枚注文した。
現時点ではYouTubeでさらっと聴いた程度だから、あまり下手なことは言えないが、直接的な類似はさほどないように思われる。しかし、これほど聴いていて自分にしっくりくる音楽もそうそうない。ある人がそういう音楽を称して肌着のような音楽だと言っていた。まさにその肌着のような音楽である。
そういう音楽を言い当ててくれた彼は分母分子でいうところの分母の奥のほうまで「感覚的に」見通していたということだろう。いやあ、嬉しいな。
「スキルアップ」のミュージック・ビデオを作ってくれたOTAMIRAMSのハクさんに、「とりいくんを感じた」ということで、イギリスの再発レーベルAceから出ている『Birth Of Surf』というコンピを頂いた。このCDはディック・デイルやデュアン・エディ、リンク・レイなど、初期のエレキインストを集めたものだ。こういう粋なプレゼントは本当に嬉しい。
たまに、DJをしたときのプレイリストを書いたブログの記事を読んだという方から、そういうのが好きならこれなんかどう?と自分の知らない音楽をオススメされることがある。こういう思いがけないプレゼントがやはり嬉しい。自分の手の届く範囲なんてのはたかが知れているから予想外のサジェスチョンはとても有り難い。
こういうことがあって、受信をするためには発信しなくちゃいけないんだとわかった。そう考えると普段の無口も考えものだが、それはまた別のお話。
ところで、下半期のテーマを「埒外」に決めた。まだ上半期がひと月残っているが、今は下半期に向けての準備期間だと考えて、良しとしたい。
さて、「埒外」について。金輪際、外的な要因に左右されながら自分の行動を決めるのをやめて、自発の心を大事しようと思った。
「疎外」というものは、外的要因に重きを置いた受動的な態度から生まれてくるのだと思う。周囲の環境に何かを期待するから「疎外」を感じるのではないか。端から「埒外」に身を置いて、何事も自分の心次第と考えていたほうが気楽であるような気がする。
「象のラジオ」の収録で「目標は何ですか?モチベーションとなるものは何かありますか?」という質問があった。俺はそのときに自信をもって「ない」と答えた。そこに「慣性の法則に従ってスーっとやっているだけです」と付け加えた。今にしてみると、我ながらなかなかいいセン行っていたと感じる。
おそらく質問されたときに、「目標」や「モチベーション」といったものを外的要因という意味合いで捉えたので、そういうものに左右されたくないという願いこめて「ない」と答えたのだろう。個的な高まりを重視したいということが念頭にあったのだと考えられる。しかし回答としては意図したところが伝わりづらくあまり良い物とはいえないだろう。
また、「慣性の法則」という言葉を「惰性」と捉えた場合、「何だスカしやがってコノヤロウ気取るな」と思う人もいるかもしれないが、「現に動いている最中なんだから、動機付けも何もないよな」と思って「慣性の法則」という言葉をあえて使ったといえよう。
「埒外」に身を置くことと、自分の殻に閉じこもることは少し違う。「埒外」の「外」を規定するのはあくまでも「埒」である。「埒」と自分との関係性を抜きにして「外」は成り立たない。だから「埒外」は決して「断絶」ではない。「埒外」は「埒」と地続きだから自由に行き来することができる。
わざわざ人の家まで出かけていって、「しけてんな!茶ぐらいだせや!」と憤慨するよりも、辺境に身を置いてときどきやってくる旅の人にお茶を出すぐらいがちょうど良いのではなかろうか。そうするとたまに遠いところのおみやげをくれる人もいる。

 

素面の恥ずかしさ

最近、飲んで酔っ払う機会が多くて弱っている。というのは、記憶が曖昧になって困るということだ。あれは夢だったのか、飲みの席の話だったのか、それがわからなくなって、なんだか不安になってしまう。

近頃見る夢といえば、バンドのために作った曲の断片を最近対バンしたばかりの女の子に全然良くないよとダメだしされたり、バンドメンバーに生活態度について説教されたりする妙にリアリティのある夢ばかりだからますます判断に困ってしまう。

この間、寝る前にSound Wayというレーベルが出しているナイジェリアのコンピCDを聴いているときに飲み会での自分の発言が蘇ってきてしまって恥ずかしくなってしまった。

おそらく「最近はどんなの聴いているんですか?」という質問をされたからだと思うのだけれど、自分はアフリカの音楽について語りだしたのだった。

「最近はアフリカ音楽聴いててね。フェラ・クティって人が一番有名なんだけど。Afro-Rockってコンピが良くてさあ。あとStrutっていうレーベルから色々出てんだけどねぇ、ドンシャリというかコンプで潰したような音であまり好きじゃないんだよなあ。似たようなレーベルにSoul Jazzってのがあるんだけど、そっちのほうが好きだな!」

こういう具合に口からデマカセを吐いてしまっていたのだった。何をイッチョマエに語っているのだろうか。だから酔っ払うのはイヤなんだ。

Strutというレーベルはコンパス・ポイントで録音された曲を集めたものや、オーガスト・ダーネルがらみのシングル集などを出してて、素敵なレーベルなのだが、音が棘々しくって、実際の話、聴いていて疲れるというのはある。

また、Afro-Rockというコンピが素晴らしいのはウソではない。特に一曲目Jingoというアーティストの“Fever”という曲は本当に格好良い。ドラムのリズムはハチロクなんだろうけれど、途中で頭がどこかわからなくなる。こういうのをポリリズムっていうのだろうか。

Kelisというネプチューンズの肝入で2000年頃にデビューしたR&Bシンガーがいて、彼女が最近発表したシングルのトラック“Fever”を下敷きにしていてびっくりした。気になる人は是非聴き比べてみてください。

Kelisに関していえば、何よりスモーキーな声が好きで、ネプチューンズではなくてダラス・オースティンという人がプロデュースした“Trick Me”という曲が好きだったりする。ダラス・オースティンといえば、日本では安室奈美恵をプロデュースしたことでも有名だ。親戚のオバちゃんがその頃のアムロちゃんを「演歌っぽくなったね」と言っていたことが印象に残っている。

アフリカ音楽のCDが一番充実しているのは、自分の知る限りでは、ディスクユニオン新宿本館のラテンフロアだ。ここを物色する際にしゃがみこんで隅々まで見るのだが、立ったときに毎回立ちくらみでフラフラしてしまう。貧血気味なんだろうか。お店の人に迷惑はかけたくないので、なるべく倒れたりはしたくない。

取り留めのないことばかり言っているのは、今日もアルコールが入っているからで、明日には後悔するのだろうけど、後悔するから良いのだと思う、お酒は。

 

ベース好き

実にどうでもいいことだがベースが好きだ。ギターよりも好きかもしれない。
18才頃まで楽器の上手い下手というのは難しいフレーズが弾けるかどうかで決まるものだと考える節があった。例えばルート弾きだったら下手くそ、ルイズルイズ加部よろしく弾きまくってたら上手、というように。ずっと音楽を「縦方向」に聴いていたためだ。
大学生になって軽音サークルに所属し、色んな人の演奏を目にする機会が増えた。例えば同じルート弾きをしていても弾く人によって、ベタッとしていて退屈に感じられたり、活きが良くて思わず動きたくなったりすることに気がついた。音楽は横に伸び縮みすることを知った。
はっぴいえんどの「はいからはくち」を初めて聴いたとき、ベースに対して何なんだ?と思った。Aメロ部のベースは1フレーズごとにシンコペーションの位置が変わる。聴いていてとても可笑しく感じた。
件のベースを弾いているのを誰かと申せば、細野晴臣御大であり、昔ローソンのCMで森高千里の旦那役を演じていたあのオジサンだ。当時、件のCMを観る度にこのオジサン何なの?と思っていた。そうしたら母がこの人すごい人なんだよと教えてくれた。その凄さを知ったのはそれから10年後のことだ。
細野晴臣のベースで好きなのは「花いちもんめ」「風来坊」「薔薇と野獣」「泰安洋行」「体操」「流星都市」「びんぼう」「生まれた街で」「返事はいらない」「Exotica Lullaby」「楽しい夜更かし」あたり。『公的抑圧』の「東風」における間奏には毎回ハッとさせられる。「LOVE SPACE」や「都会」の洒脱なベースにはどこか危ういところがあるが、それがとぼけた味わいになるんだからやはり名人だと思う。
ベーシスト細野晴臣のファンになったことで、音楽の聴き方が変わり好きな自ずとベーシストも増えた。需要がないことはわかっていますが、好きなベーシストを発表させてください。

トミー・コグビル Tommy Cogbill

メンフィスのアメリカン・サウンド・スタジオのお抱えバンド=メンフィスボーイズの一員として多くの名演を残したコグビル氏。アメリカ南部のボトムを支えたベーシスト三英傑の一人。(残る二人は言わずもがなドナルド・ダック・ダンとデヴィッド・フッド)
アレサのマッスル・ショールズがらみのアルバムを聴いてまずベースに反応した。ベースを弾いているのはデヴィッド・フッドかと思えばさにあらず。どっこい当時まだ腕に自信のなかったフッド氏に代わってメンフィスから呼び出されたコグビル氏であった。
コグビル氏のベースは恰幅が良い。キング・カーティスの“Memphis Soul Stew”をジェリー・ジェモットの弾くフィルモア・ウェスト版と比べると、ジェモット氏の方は小回りが利く印象を受け、一方、コグビル氏はどっしり構えていて四輪駆動の車のようだ。そこで、トミー”ミスタータンクローリー”コグビル氏のどでかいベースラインベスト3。
“Funky Broadway” Wilson pickett
“Wearin’ That Loved On Look” Elvis Presley
“Chain Of Fools” Aretha Franklin 

チャック・レイニー Chuck Rainy

弦はゴム製のものを使っているのか?と思うほどのものすごい躍動感に、音にも運動エネルギーってあるんだなあとしみじみ思う。16分音符で敷き詰めたベースラインは体育館に大量のスーパーボールを天井から落としたようなもの。ゴムっぽいといえば、ザ・バンドのリック・ダンコのベースにはとてもラバー感がある。彼らのような素敵なベーシストは空間が伸縮する様を音で描くことができる。
ベーシストが苦心することの一つにキックのアタックといかにしてタイミングを合わせるかということが挙げられると思うが、レイニー氏はそれのとても良いお手本になるだろう。盟友バーナード・パーディーとのコンビによる“Rock Steady”なんかはバスドラとベースが一つの音の塊のように聴こえる。レコーディングの技術もあるのだろうが。
レイニー氏の演奏でお気に入りは、アレサの歌ったバカラック/デヴィッドのペンによるゴージャスな“April Fools”での演奏。リズムアレンジの下敷きはおそらく“Tighten Up (Part.2)”の特にフェードアウトする部分ではないかと思う。いや違う、インプレッションズの“We’re a Winner”のNY流16ビート的解釈ではないか。それにしても素晴らしい演奏。
基本的にはダンディな物腰のレイニー氏だが、興が乗れば「いつもより余計回しています」ということもある。そんなわけでハイテンションのレイニー氏ベスト3。
“Cold Sweat” Phil Upchurch
“Proud Mary” The Voices Of East Harlem
“Get Back” Shurley Scott & The Soul Saxes

アール・ロドニー Earl Rodney

マイティ・スパロウのアルバム「Hot And Sparrow」でベースを弾いている人。本業はスティール・パン奏者で、またアレンジもこなす。マイティ・スパロウやロード・キチナーといったカリプソ歌手のバックバンドで監督役を務めていたそうだ。
ロドニー氏は縦と横のバランスが取れたベースラインを弾く。そういった意味でジェイムズ・ジェマーソン、ポール・マッカートニー、細野晴臣のようなタイプ。理想的なベーシストである。
Friends & Countrymenというスチールドラムアフロファンクといった趣のDopeなリーダー作もある。
“Sparrow Dead” Mighty Sparrow
“Strife in the Village” Earl Rodney

ティナ・ウェイマス Tina Weymouth

概ね「トーキング・ヘッズのかわいこちゃん」みたいな扱いだが、この人ほど丹念にベースを弾く人はいないんじゃないかと思う。YouTubeかなんかでちょろっと「ストップ・メイキング・センス」観て黒人のグルーヴが云々という知ったような口を利く輩はまず彼女の音価と休符を完コピして出なおして来いと言いたい。おまえは音価のコントロールで愛嬌を表現することができるのかと問いたい。トム・トム・クラブは永遠です。
“Wordy Rappinghood” Tom Tom Club
“Psycho Killer” Talking Heads
“Take Me To The River” Talking Heads